やめようと思いながら吸っている不思議

いつのまにかタバコを吸っている

すでにお話ししたように、私は自分自身の経験から禁煙の問題に取り組むようになりました。

 

私が最終的に禁煙したときには、まるで魔法のとように簡単でしたが、それ以前の禁煙では何週間も暗いゆううつな気持ちが続きました。

ときどきは気分の良い日もありましたが、次の日には憂鬱に逆戻り。
それはまるで足場のない穴に落ちたような感じで、やっと出口に辿り着き太陽が見えたかと思いきや、再び落ちていきます。

 

結局またタバコに火を付け、「こんなにまずいものどうして吸わなければいけないのだろう」と自分に問いかけたものです。

 

私のセラピーでは禁煙希望者にまずこう質問します。
「あなたはタバコをやめたいですか?」

 

バカバカしい質問といえばそうです。希望者なら誰だってタバコをやめたいと思っていますから。タバコの常用者に聞いてごらんなさい。

 

「あなたはタバコ中毒になってしまっていますが、もし吸い始める前に戻れるとしたら、やっぱりタバコを吸いますか?」

 

答えはどんなによく吸う人でも「まさか」です。

 

確固たる喫煙者―つまりタバコが健康を害しているなどとは思っていない人、社会的汚名を気にしない人、タバコを買う十分な財がある人(最近はこういう人は減ってきていますが)に聞いてごらんなさい。

 

「あなたの子供さんにもタバコを吸うことを勧めますか?」

 

答えは「まさか」です。
喫煙者は皆、何か悪霊のようなものの囚われの身になったと感じています。

 

吸い始めて日の浅い内は「もうじきやめよう、今日じゃなくて明日やめよう」と思っていますが、ついには「自分は自制心がない」「喫煙は先天的に必要なんだ」「人生を楽しむためにタバコは欠かせない」などと思うようになります。

 

タバコをやめられない時

 

喫煙とは本当に不思議な行為です。

 

ただ他の人がそうしているだけの理由で吸い始め、吸い始めた誰もが「こんなもの時間とお金のムダだ、始めなければよかった」と悔やんでいます。

 

喫煙者が喫煙を楽しんでいないなんて、おかしな話しではありませんか。
それでも誰もが若いときにはタバコは大人になった証拠だと信じ、必死で慣れようとします。

 

そして時が経つと自分の子供には「吸うな」と説教し、自分は必死でやめようとするのです。

 

こうして喫煙者は一生を通してタバコに大枚をはたきます。

 

英国の喫煙者は一生に平均三万ポンド(訳者注・・約600万円)をタバコに使います。それほどのお金があればなにができるでしょう?

 

喫煙者はそのお金でわざわざ発がん性のタールで充満させ、血管を毒で侵し痛めつけているのです。

 

毎日全身の細胞と臓器からの酸素を奪っているのですから、体はだんだんと弱っていきます。
不潔感、口臭、ヤニのついた歯、焦げの付いた服、汚れた灰皿、古いタバコが放つホコリっぽい臭い……まるで一生奴隷生活に身を置いているようなものです。

 

喫煙者の人生の半分は喪失感に満ちています。
教会、病院、学校、地下鉄、劇場など喫煙の許されていない場所にいるか、または減煙や禁煙をしようとしているからです。
残りの半分は喫煙を許された場所ですごしますが、そのときも「吸わないですめばなぁ」と思っています。